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最高裁判所第三小法廷 昭和32年(オ)260号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人久保田源一の上告理由について。

第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基く第三者の建物買収請求権はこれによつて消滅するものと解すべきである。(大審院昭和一一年二月一四日言渡判決、判例集一五巻一九三頁参照。)所論の点について原判決の判示した事実によれば、所論の土地(田九畝九歩)の賃貸人であつた訴外福山国彦は当時の賃借人神谷利平に対し判示調停条項に基きその賃料不払を理由として昭和二八年七月一一日賃貸借解除の通知をしその通知は即日同人に到達した、控訴人(上告人)原口鎮は右土地の上に建てられていた所論の建物(第一審判決主文第二項記載)を前記解除通知前である同年一月二六日訴外小田源吾(前記神谷利平よりこの建物を買い受けた者)より買い受けたが、この買受の際その敷地に対する土地賃借権の譲渡について前記福山国彦の承諾を得たことは認められない、同控訴人(上告人)は昭和二九年五月二〇日の原審口頭弁論期日において被控訴人(被上告人)等に対し右建物買取請求の意思表示をした、というのであるから、右上告人原口鎮が右土地賃借権の譲受について賃貸人福山国彦の承諾を得ない間に右土地賃借権は前記解除通知により昭和二八年七月一一日消滅に帰し、これとともに右建物買取請求権も消滅するにいたつたものといわねばならない。さればこれと同趣旨にいでた原審の所論判示は相当である。論旨は判例違反をいうけれども、引用の判例はいずれも事案を異にし本件に適切でない。論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)

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